誰も悪くないのに、なぜか毎日少しずつ時間が足りない会社

 


コメンテーター紹介

  • 榊原 誠 :高い視点を持つが専門用語を嫌う構造翻訳者。未来の技術を語る前に、今日の現場に流れる重い空気や違和感を言葉にする。

  • 柴田 恒一 現場の責任者。新しい提案を疑い、目の前の仕事が回らなくなることを恐れる、読者の代弁者。


最近ちょっとおかしい

柴田 「榊原さん、ちょっといいですか。上から『これからはAIで自動化だ』って言われてるんですけど、現場は正直それどころじゃなくて。失敗した時のリスクとか、稟議をどう通すかばかり考えて胃が痛いんですよ」

榊原 「大変ですね。でも柴田さん、本当に怖いのは『失敗すること』でしょうか。最近、人が急に辞めたわけでもないのに、なぜか毎日、全員の時間が少しずつ足りなくなっている感じはありませんか」

柴田 「……まさにそれです。気がつくと全員が何かの応急処置をしていて、先のことを考える余裕なんて1分もない。技術を導入して上を出し抜くとか、そういう威勢のいい話がどこか遠くの国のおとぎ話に聞こえるんです」

誰も暇にならない

榊原 「自動化って、会社を一段上に持っていくとか、そういう大層な話の前に、要するに『誰も触れないブラックボックス』をこれ以上増やさないためのものなんですよね。ベテランの頭の中にしかない手順とか、あの人が休むと止まる業務とか」

柴田 「それは分かります。でも、そのベテランの勘みたいなものをデータにするとか、AIに覚えさせるとかって、結局また現場に新しい負担が増えるだけじゃないかって疑ってしまうんです。今だってメールは減らないし、終わらない仕事に追われているのに」

榊原 「そうですよね。疲れている時に『未来のための投資』と言われても、明日を生き延びる方が先ですから。でも、もしその自動化が、新しい仕事を増やすためではなく、誰も悪くないのに忙しくなっていくあの『見えない空気』を買い取るものだとしたら、どうですか」

引き継ぎだけが増えていく

柴田 「見えない空気を買い取る、ですか。うちの部署、最近は新しい改善案を出す人より、誰かが辞めた時のための『引き継ぎ書』を作っている人の方が多いんです。回らなくなるのを防ぐだけで精一杯で」

榊原 「それこそが、実は一番コストがかかっている部分なんです。隣の会社がなぜか同じ人数で早く帰り始めているとしたら、彼らが優秀だからではなく、その『引き継ぎ書を作る時間』自体をAIに肩代わりさせているからかもしれません」

柴田 「なるほど……。私たちは、人を楽にするためじゃなくて、これ以上現場のすり減りを増やさないための防衛策として、そういうAIを捉え直さなきゃいけない時期にきているのかもしれませんね」

確実な勝ち筋をデータで証明する

柴田 「でも、やっぱり上層部に通すには『確実な勝ち筋』とか『再現性』みたいな数字が必要なんですよね。現場の感覚だけで『楽になります』じゃ、稟議のハンコはもらえない。そこが一番の壁なんです」

榊原 「まず、誤解が有りますが、AIは、数千円/月で導入可能です。しかも、全員に入れなくても構わない。稟議を通すためのデータは、他社に勝つための武器というより、柴田さんが『ほら、言った通りでしょ』と安心して枕を高くして眠るための盾です。誰がやっても同じ品質になる構造を、ただ静かに数字で示すだけでいいんですよ。AIへの見方を変える、いや、AIのことを勘違い辞める、ことです」

柴田 「AI、ですか。確かに、失敗した時に自分が背負い込むリスクを減らせるなら、AI導入にも納得がいきます。格好いい成功事例じゃなくて、うちの現場の泥臭いムダが消える証拠が欲しいんですよね」

次の行動は「時間ゼロ」で

榊原 「大掛かりな準備はいりません。明日から急に会社が変わるわけでもない。ただ、次にベテランのあの人が席を外した時、あるいは問い合わせの通知が鳴り響いた時、ふと思い出してほしいんです」

柴田 「『あ、この記事で言っていた、余白が消えてる状態ってこれか』と。そこをAIが支援する」

榊原 「ええ。それに気づくだけなら、時間は一秒もかかりませんから。まずはそこからでいいと思います」

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