「佐藤さんにしか分からない」と言われる仕事を、AIに教え込んでおく方法

 


コメンテーター

榊原 誠(さかきばら まこと)/ 構造翻訳者

大仰な専門用語やトレンドワードを嫌い、現場の「なんかモヤモヤする」という違和感を言葉にするのが得意。システムや組織の構造的な歪みを見抜く高い視点を持つが、語る言葉は常に具体的で、今日の仕事に寄り添っている。

柴田 恒一(しばた こういち)/ 現場の代弁者

日々の業務に追われ、常に少し疲れている中堅社員。新しい経営理論やITツールを急に上から降ろされても、簡単には納得しないし、面倒くさがる。ただ、変化を拒んでいるわけではなく、現場のリアルな葛藤や「そんな綺麗事では回らない」という本音を素直に口にできる。


1. 「あの件、佐藤さんに聞かないと」を一日何回言っているか

榊原: 最近、社内で「あの件は佐藤さんに聞かないと」っていう会話、一日何回くらい耳にしますか?

柴田: ああ……、まあ、日に何度かは。佐藤さん、ウチの生き字引みたいな人ですからね。彼がいないと止まる案件、結構ありますよ。

榊原: それが、今の会社の「本当の姿」かもしれませんね。


2. 佐藤さんが有給を取る前日、なぜかチームがピリピリする

柴田: ええ、だから佐藤さんが有給取るときなんて、前日からみんなピリピリしてますよ。何かあったらどうしようって。 でもそれ、佐藤さんが優秀だって話じゃないんですか?

榊原: 優秀なのは間違いないです。 ただ、その「優秀さ」の内容が、「誰も触れない複雑なパズルを、一人で解き続けている」状態になっていませんか。


3. 「属人化」というより、佐藤さんの頭の中にしか地図がない

柴田: パズル、ですか。 まあ、確かに彼にしか分からない暗黙知みたいなものは多いですけど。

榊原: それを世間では「属人化」と言いますが、現場の感覚だと、「佐藤さんの頭の中にだけ、会社の地図がある」状態。 佐藤さんがいないと、みんな迷子になる。 でもこれ、一番辛いのは迷子になる僕らじゃなくて、地図を持ち続けなきゃいけない佐藤さん本人なんですよ。


4. 会社が続くほど、佐藤さんのパズルが難しくなっていく

柴田: ……。 言われてみれば、佐藤さん、いつも忙しそうで。改善案出しても、「それを反映させる余裕がない」って苦笑いしてました。

榊原: そう。地図が古くなっても、書き直す時間がない。 結果、さらに複雑な地図になって、佐藤さんにしか読めなくなる。 会社が長く続くほど、佐藤さんの負担が無限に増えていく構造です。


5. 「マニュアル作れ」と言われても、そんな単純な仕事じゃない

柴田: でも、それをどうにかしようってんで、マニュアル作れとか、AIに教え込ませろって話になるんでしょう? それができりゃ苦労しませんよ。佐藤さんの仕事は、そんな単純じゃない。

榊原: ええ、単純じゃないからこそ、マニュアルは無理です。 でも、AIへの「教え方」を変えれば、話は別かもしれません。


6. 完璧な説明書はいらない。佐藤さんの「独り言」を横で聞かせる

柴田: 教え方?

榊原: はい。完璧なマニュアルを作ってAIに読ませるんじゃなく、「佐藤さんの日々の独り言」をAIに聞かせるんです。 佐藤さんが判断に迷ったとき、何をどう考えたか。それを、ただ隣でAIにメモさせる。

柴田: 独り言……?

榊原: ええ。きれいなデータじゃなくていい。 「あ、この前のA社の件は、過去にこういう経緯があったから、今回はこう判断した」みたいな、佐藤さんの「頭の中の整理」をそのままAIに渡していく。 それを繰り返すと、AIの中に「佐藤さんの判断のクセ」が少しずつ溜まっていくんです。


7. AIに溜まれば、みんなで使える

柴田: 佐藤さんの、判断のクセ、ねえ……。

榊原: それが溜まれば、いつか柴田さんが迷ったとき、「佐藤さんなら、たぶんこう言うよ」とAIが教えてくれるようになる。 佐藤さんの地図を、みんなで少しずつ共有できるようになるんです。

柴田: ……。 明日、佐藤さんの独り言、ちょっと録音してみようかな。

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