【前回の航海ログ】https://vai-ja.blogspot.com/2025/10/ai_13.html
【今回、特に刺さる人】 ・他社の成功事例を見るたびに、自社とのギャップにため息が出る人 ・「自動化で業務効率化」という言葉が、現場への押し付けに聞こえてしまう人 ・正論のシステムを導入して、過去に手痛い失敗をした経験がある人
【アラート】 「他社はこれで成功した」という綺麗なデータほど、現場にとっては【ただのプレッシャー】に変わります。数字が正しいからといって、人が動くとは限りません。
【こうすれば】 まずは、仕組みを維持するために増える「名もなき入力作業」の重さに気づくこと。システムを賢くする前に、現場の負担を【1個だけ手放す】対話が必要です。
【まとめ】 効率化の正論に隠された、現場の「静かな拒絶」の構造が見えてきます。
【本日のコメンテーター】
■ 榊原 誠 元外資系戦略部門で構造観測を担当。マクロな視点から、企業の「戻れない構造変化」を淡々と見つめる。
■ 柴田 恒一 中小企業の現場支援を長年手掛ける元現場責任者。「結局、誰がそれをやるの?」という泥臭い視点を忘れない。
■ 高城 誠一(ゲスト) 地方都市圏の製造卸売業で専務取締役を務める。過去にシステムの導入で現場を大混乱させた苦い経験を持つ、現実主義者。
招集 【前回の航海ログ】 https://vai-ja.blogspot.com/2025/10/ai_13.html
榊原: 「柴田さん、前回の『固定費で未来のリスクを買う』という話ですが。事例としては非常に綺麗なんですけど、少し現場の視点が足りない気がしましてね」
柴田: 「あ、やっぱりそう思いました? 卸売業で対応時間が半分になったとか、小売業で在庫ロスがゼロになったとか、話が【出来すぎ】なんですよ」
榊原: 「ええ。ですから今日は、その『綺麗な事例の裏側』をよく知る方を会議室にお呼びしています」
数分後、少し日に焼けたスーツ姿で会議室に入ってきたのは、現場のデジタル・シフトで泥臭い苦労を重ねてきた高城だった。
対談
高城: 「よろしくお願いします。……いや、前回の記事、読ませてもらいましたよ。川西部長の話、本当に耳が痛いというか、他人事じゃないですね」
柴田: 「高城さんのところも、昔はこういう『AIで自動化』みたいな話、稟議に上がったりしたんですか?」
高城: 「上がりました、上がりました。それで大失敗したんです。【確実な勝ち筋】なんてデータを見せられて、これならいけると思って導入したんですけどね。現場は全く動きませんでした」
榊原: 「データで証明された再現性が、現場では機能しなかった。それはなぜでしょう?」
高城: 「システムを動かすための【名もなき作業】が、現場のパートさんの負担になるからですよ。チャットボットでも在庫管理でも、誰かが毎日データを正しく入力しなきゃいけない。その時間が抜けているんです」
柴田: 「あー、それ。システムを入れたせいで、逆に『確認するための仕事』が増えるやつだ。現場からしたら『余計なことすんな』って話ですよね」
高城: 「そうなんですよ。業務効率化の稟議書って、本当に綺麗に書けるんです。でも、現場に行くと『ボタンが押しにくい』とか『画面が変わって迷う』という理由で、静かに【使われなくなる】」
――ここで一度、これまでの話を整理します。
・効率化の綺麗なデータほど現場の負担が見えなくなる
・システムを維持するための名もなき入力作業が現場を阻む ・正論で固めた稟議書ほど現場で静かに使われなくなる
榊原: 「なるほど。経営陣や管理職は『固定費の削減』を期待しますが、現場が消費しているのは【認知のエネルギー】ですからね。そこのすれ違いが構造的に起きている」
柴田: 「ベテランのノウハウを資産に変えるって言ったって、そのベテランが『なんで俺の仕事をパソコンに教えなきゃいけないんだ』ってへそ曲げたら終わりですしね」
高城: 「まさにそれです。うちのベテランも最初は露骨に嫌な顔をしました。だから私は、高度な自動化を目指すのを途中で諦めたんです。まずは【1個だけラクになる】ことしかやらないと決めました」
榊原: 「全てを自動化するのではなく、部分的な引き算から始めたわけですね」
高城: 「ええ。問い合わせを全部AIに任せるんじゃなくて、よく来る特定の質問のFAXだけを自動で仕分ける、とかね。そのくらい『小さくて泥臭い変化』じゃないと、現場の密度は下がらないんです」
柴田: 「でも高城さん、それだと『他社を出し抜く』ような劇的な成果はすぐに出ないんじゃないですか?」
高城: 「出ないですよ。でも、動かない100点のシステムより、毎日動く20点の仕組みの方がよっぽど【堅実な資産】になりますから」
榊原: 「競合が先へ進む不安から、大きな仕組みを入れたくなる気持ちは分かります。しかし、現場が静かに疲れ始めた時、その構造はすでに崩壊を始めていますからね」
高城: 「まずは、パートさんが『これならやってもいいよ』と言ってくれる、本当に小さな1歩からしか戻れないと思います」
いかがでしたか。
変化の波は、大きな音を立ててやってくるわけではありません。 ただ、正論を詰め込んだ書類が増えるたびに、現場は静かに黙り込んでいきます。 自社の足元にある「名もなき仕事」の重さに、気づいた人から、少しずつ形を変え始めています。


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